連載開始記念☆

2003年12月3日
今日は、別にこれといってネタがないので、
さっそく連載開始。

第1話。


「きゃっ!」
甲高い声を発して、少女は自転車ごと、歩道から車道にはみ出すように倒れこんだ。

とりあえず車を少し下げて、彼女の元に駆け寄った。
「すいませんっ!大丈夫ですか?」
「いったぁ〜」
少女とともに自転車を起しながら
「どこか痛いですか?」
「このヘンが…」
腰の後ろに手を当てた。

 とある火曜日の朝のこと。
仕事で小笹3丁目の現場に向かっていた途中、立ち寄ったコンビ二から県道に出ようとして、歩道を走ってきた女子高生の乗る自転車と接触したのだった。
 県道555号線は福岡市の博多区比恵町から始まり、百年橋通りと通称される往還道路が平尾を経由し、小笹交差点から南へ向きを変え、西長住を経由して南区桧原までを結ぶ。バス通りでもあり交通量は大変多い。
ひとまず、コンビ二の駐車場の隅の空きスペースに車を移動し、少女と自転車を車の後ろまで導いた。
ここなら歩道にも駐車場を出入りする車両からも離れていて安全だった。

「本当にごめんなさい。大丈夫ですか?」
「ん…。ちょっとわかんないけど…」
「怪我しているのなら病院に行かないと…とりあえず事故ですから警察に電話しますね。いいですか?」
「あ…はい」
高校の制服のようだが、紺色のスカートのお尻の辺りが少し汚れていた。掌で叩いて汚れを落としながら少女は答えた。
携帯を出して110番をプッシュした。
場所を説明すると、コンビ二で正確な住所を聞いて来るように言われ、一度店内に入り、店員に聞いた住所を伝えた。
「城南区長尾3丁目14のXで、(コンビ二名)S長尾3丁目店だそうです」
すぐに最寄りの交番から警察官を派遣するということだったので
「警察が来てくれるそうなのでちょっと待ってくださいね」
「はい」
「もし、学校に遅れそうだったら電話したほうがいいんじゃない?」
と携帯を差し出した。
「あ、いいえ…自分の持ってますから…」
今は高校生でも大半の子が携帯を所持している時代のようだ。
ポケットから取り出した自分の携帯で電話をかけ始めた。
聞こえてくる内容によると、相手は学校ではなく、友人らしい。
仲の良い友人に、途中で事故って少し遅れるかもしれないから先生にに伝えてほしいと頼んでいた。
「本当に登校中にすいません…あ、そうだ。僕もちょっと電話を…」
会社に電話をして事故を説明し、待ち合わせ時間には間に会わない可能性が高いので、先方に迷惑を掛けるといけないから、代理の人間を手配したほうがいいかも…と言うと、先方も遅れるらしいから、しばらく様子をみましょうという返事だった。

 電話を切ると、
「なんだか痛みが落ち着いてきたら、あんまり痛くなくなってきたので、やっぱりいいです」
意外なことを言い始めた。
「ダメだよ!ちゃんと病院に行かなくちゃ!」
思わず声のボリュームを上げてしまった。
「腰とか、そのヘンは女の子にとってはとっても大切なところなんだから、何も内容でもちゃんと病院に行っておかないと、将来もし子供が生まれないような影響を及ぼしたりしたら大変だから…」
「いえ、でも本当に、もう殆ど痛くなくなってきたから…たぶんちょっと尻餅ついちゃって、一時的に痛かっただけだから…」
「でももう少ししたら警察の人が来ると思うけど…」
「やっぱり学校のほうもあまり遅刻したくないし…すいません。学校行きます」
「あっ!ごめんっ!…じゃあ、ちょっと待って」
彼女を引き止め、ポケットに常備しているメモ帳に名前、会社名、住所、自宅と携帯の電話番組を書いてページを破った。
「もし、病院に行くときは必ず連絡してくださいね」
メモ紙を渡しながら念を押した。
「あ…それと、もし電話貰ったときのために名前だけ教えて下さい」
「やすのがわ・はなです」

…つづく…


 最近はテレビドラマだって初回放送分だけ30分拡大版でやるようになったので、この1000文字連載小説も初回を記念して1.5倍の拡大版です。

第2回目をお楽しみに…

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