福岡市でいちばん利用されている歩道橋
2003年12月4日今日の仕事はその歩道橋の上でした。
福岡市東区、香椎という町の香椎参道口交差点は国道3号線から西鉄香椎駅へと向かう交差点で、この交差点から西鉄の駅を越え、JR鹿児島本線、続いてJR香椎線を斜めに交差する踏み切りを過ぎると舞松原駅の駅前までJR線に沿っている。
更に土井の市街地まで続いているこの道は県道24号線、「福岡東環状線」と呼ばれる道路だ。
この路線は香椎参道口交差点からJR鹿児島本線の踏切りまでは終日渋滞している。西鉄とJR鹿児島本線の二つの踏切りの間が50mもないのが大きな原因だ。
香椎参道口交差点は香椎の町の中心部に極々近いこともあって車両も人も交通量はかなり多い。
そんな交通の要衝とも言える交差点なのに横断歩道は1面もない。信号機も車両専用のものしか設置されていない。
歩行者、自転車通行するコースが全て約10m近く上空に移動しているのだ。
この歩道橋は「千早横断歩道橋」、愛称「みゆきロード」と呼ばれ、交差点の十字に対してX状にクロスしている。つまりスクランブルの斜め横断部分が空中に浮いている形なのだ。
しかも登り口は交差点の4つの角に2.5メートル近い広い幅をとった斜度の緩やかな階段が設けられ、階段の真ん中には80センチくらいはありそうな幅広のスロープがある。
僕も今回始めてこの「みゆきロード」を利用したのだが、自転車を押して双方から離合するのに十分な余裕があるのには驚かされた。ただ階段の斜度が緩やかなので自然と上り下りする階段の距離は長くなり、途中折り返しの踊り場を含めると4ヶ所の階段はどれも50m近くにはなりそうだ。
でもこの歩道橋のスゴイところは、この50m近くの上り下りが困難な車椅子、お年寄り、ベビーカーなどの為に4箇所の階段のすぐ横ににそれぞれエレベーターを設置してあるところだ。
地方自治体は税金を無駄遣いしていると何かと批判を受けることが多いが、交通量の多い交差点にこういう歩道橋を設置するのならどんどん税金を使っていいと思う。
みゆきロードが設置されたことによって、今後香椎参道口交差点で歩行者が犠牲となる交通事故が起こることは無いだろう。
そう考えると、これこそが「税金の生きた使い道」と言えるだろう。
インターネットで「Map Fan Web」や「Do Map」、「ちず丸」などを利用している方は“福岡市東区香椎”の“香椎参道口交差点”の地図を見てもらえばその形状がよく分かることと思いますが、X字の中央のクロス部分は円形になっていて、おそらく直径は10mくらいあるのではないかと思われ、そのど真ん中、中心点から半径約1.5メートル程の区間、路面にはめ込まれているタイルが少し浮き上がっているので、その補修の作業だった。金槌で軽く叩いてみると、カンカンと高い音がして、下に僅かな空間が空いていることがよく分かった。
中央部をカラーコーンとコーンバーで円形に仕切り、その中で作業を行い、歩行者や自転車は外側を通行してもらった。
四方からかなり頻繁に歩行者や自転車が通行し、そのたびに誘導が分かる程度の距離まで行き、僅かな迂回を促す。
そのため、常にどの方向から来ているか、途中の階段や下のエレベーター前などをチェックし、中央円に到着するまでの時間、どちらが先かを予想して位置を決める。
南東と南西の2方向から来ているときは南向きに位置し、両方を同時に誘導する…といった要領だ。
4方向から同時に来られたりすると、2方向は切り捨ててしまうことになる。
その場合、お年寄りや小さい子供を連れている人などを優先して誘導した。
しかし、どの方向からが早いか?など予想していると結構面白く、楽しんで仕事ができた。
作業自体は3時過ぎに終了し、タイルを嵌めなおした場所を踏まれないよう、カラーコーンとバーで正方形に規制して後片付けをした。
7日の日曜日、福岡では国際マラソンが開催され、この真下の国道3号線はコースになっている。約1kmに渡って上からコースが見下ろせるこのみゆきロードも多数のギャラリーが集中することも予想されているので、それまでには塗りなおしたモルタルも固まってくれるだろう。
しかし考えてみると、決して浮いているわけではないが、5時間以上も空中に居た、大変貴重な経験だった。
***********************
第2話
「やすのがわ・はな?」
一瞬、漢字が思い浮かばなかったが、
「“やす”は“安心”の“安”で“野原”の“野”に…“かわ”はさんずい?それとも三本川?」
「三本川のほうです」
「で…“はな”は?」
「“華麗”の“華”です」
「カレーのカ?」
「中華料理の“華”」
「あぁ、“華やか”の“はな”ね?」
「はい、そうです」
“華”と書いて“はな”か…、可愛くて良い名前だなぁ…と思ったが、口にはしなかった。
そう言えばよく見ると、顔のほうも意外に可愛いかも…いや、結構可愛い顔してるぞ、この子。
不謹慎なことを考えたりしているのを見透かされたりしないよう、努めて平静に振る舞いながら
「じゃあ、警察の人が来たらキャンセルしておくから…」
「警察にキャンセルなんてできるんですか?」
「キャンセル料要求されちゃったらどうしょうか?」
「んな訳ないでしょう」
根はマジメそうで、結構気さくな子のようだった。
「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい。でもホント、ちょっとでも怪我してるようだったら必ず病院に行って、僕にもちゃんと電話してきてくださいね。僕は貧乏人だけど保険でちゃんと支払うことはできるんだから…」
「はい。分かりました」
そう言って再び自転車に乗って走っていく少女の紺色の背中を見送りながら、「あんな可愛い子、連絡先を聞かなかったのは失敗だったかな?」なんて心残りを感じていた。
思いの外待たされて一台のパトカーが駐車場に入ってきた。
長尾は七隈交番の担当地域らしく、この時間帯はルートである福大通りはかなり混雑しているので止むを得ぬことだった。
道を隔てて東側の長丘は南区なので南警察署の管轄となり、長住交番の担当だ。長住交番までは車なら10分もかからない。道一つ隔てただけで警察の到着時間もかなり違うことになる。
「あれ?でも田島の交番のほうがココから近いのでは…?」
「田島交番は無くなりました」
「え!?なくなっちゃったんですか?」
「はい。8月に交番の再編成が行われて、田島は廃止になってうちの七隈交番の担当地域に取り込まれました」
「そうなんですか…」
二人やってきた警察官のうち年配のほうはかなり話し易い人だった。
…つづく…
福岡市東区、香椎という町の香椎参道口交差点は国道3号線から西鉄香椎駅へと向かう交差点で、この交差点から西鉄の駅を越え、JR鹿児島本線、続いてJR香椎線を斜めに交差する踏み切りを過ぎると舞松原駅の駅前までJR線に沿っている。
更に土井の市街地まで続いているこの道は県道24号線、「福岡東環状線」と呼ばれる道路だ。
この路線は香椎参道口交差点からJR鹿児島本線の踏切りまでは終日渋滞している。西鉄とJR鹿児島本線の二つの踏切りの間が50mもないのが大きな原因だ。
香椎参道口交差点は香椎の町の中心部に極々近いこともあって車両も人も交通量はかなり多い。
そんな交通の要衝とも言える交差点なのに横断歩道は1面もない。信号機も車両専用のものしか設置されていない。
歩行者、自転車通行するコースが全て約10m近く上空に移動しているのだ。
この歩道橋は「千早横断歩道橋」、愛称「みゆきロード」と呼ばれ、交差点の十字に対してX状にクロスしている。つまりスクランブルの斜め横断部分が空中に浮いている形なのだ。
しかも登り口は交差点の4つの角に2.5メートル近い広い幅をとった斜度の緩やかな階段が設けられ、階段の真ん中には80センチくらいはありそうな幅広のスロープがある。
僕も今回始めてこの「みゆきロード」を利用したのだが、自転車を押して双方から離合するのに十分な余裕があるのには驚かされた。ただ階段の斜度が緩やかなので自然と上り下りする階段の距離は長くなり、途中折り返しの踊り場を含めると4ヶ所の階段はどれも50m近くにはなりそうだ。
でもこの歩道橋のスゴイところは、この50m近くの上り下りが困難な車椅子、お年寄り、ベビーカーなどの為に4箇所の階段のすぐ横ににそれぞれエレベーターを設置してあるところだ。
地方自治体は税金を無駄遣いしていると何かと批判を受けることが多いが、交通量の多い交差点にこういう歩道橋を設置するのならどんどん税金を使っていいと思う。
みゆきロードが設置されたことによって、今後香椎参道口交差点で歩行者が犠牲となる交通事故が起こることは無いだろう。
そう考えると、これこそが「税金の生きた使い道」と言えるだろう。
インターネットで「Map Fan Web」や「Do Map」、「ちず丸」などを利用している方は“福岡市東区香椎”の“香椎参道口交差点”の地図を見てもらえばその形状がよく分かることと思いますが、X字の中央のクロス部分は円形になっていて、おそらく直径は10mくらいあるのではないかと思われ、そのど真ん中、中心点から半径約1.5メートル程の区間、路面にはめ込まれているタイルが少し浮き上がっているので、その補修の作業だった。金槌で軽く叩いてみると、カンカンと高い音がして、下に僅かな空間が空いていることがよく分かった。
中央部をカラーコーンとコーンバーで円形に仕切り、その中で作業を行い、歩行者や自転車は外側を通行してもらった。
四方からかなり頻繁に歩行者や自転車が通行し、そのたびに誘導が分かる程度の距離まで行き、僅かな迂回を促す。
そのため、常にどの方向から来ているか、途中の階段や下のエレベーター前などをチェックし、中央円に到着するまでの時間、どちらが先かを予想して位置を決める。
南東と南西の2方向から来ているときは南向きに位置し、両方を同時に誘導する…といった要領だ。
4方向から同時に来られたりすると、2方向は切り捨ててしまうことになる。
その場合、お年寄りや小さい子供を連れている人などを優先して誘導した。
しかし、どの方向からが早いか?など予想していると結構面白く、楽しんで仕事ができた。
作業自体は3時過ぎに終了し、タイルを嵌めなおした場所を踏まれないよう、カラーコーンとバーで正方形に規制して後片付けをした。
7日の日曜日、福岡では国際マラソンが開催され、この真下の国道3号線はコースになっている。約1kmに渡って上からコースが見下ろせるこのみゆきロードも多数のギャラリーが集中することも予想されているので、それまでには塗りなおしたモルタルも固まってくれるだろう。
しかし考えてみると、決して浮いているわけではないが、5時間以上も空中に居た、大変貴重な経験だった。
***********************
第2話
「やすのがわ・はな?」
一瞬、漢字が思い浮かばなかったが、
「“やす”は“安心”の“安”で“野原”の“野”に…“かわ”はさんずい?それとも三本川?」
「三本川のほうです」
「で…“はな”は?」
「“華麗”の“華”です」
「カレーのカ?」
「中華料理の“華”」
「あぁ、“華やか”の“はな”ね?」
「はい、そうです」
“華”と書いて“はな”か…、可愛くて良い名前だなぁ…と思ったが、口にはしなかった。
そう言えばよく見ると、顔のほうも意外に可愛いかも…いや、結構可愛い顔してるぞ、この子。
不謹慎なことを考えたりしているのを見透かされたりしないよう、努めて平静に振る舞いながら
「じゃあ、警察の人が来たらキャンセルしておくから…」
「警察にキャンセルなんてできるんですか?」
「キャンセル料要求されちゃったらどうしょうか?」
「んな訳ないでしょう」
根はマジメそうで、結構気さくな子のようだった。
「じゃあ、気を付けて行ってらっしゃい。でもホント、ちょっとでも怪我してるようだったら必ず病院に行って、僕にもちゃんと電話してきてくださいね。僕は貧乏人だけど保険でちゃんと支払うことはできるんだから…」
「はい。分かりました」
そう言って再び自転車に乗って走っていく少女の紺色の背中を見送りながら、「あんな可愛い子、連絡先を聞かなかったのは失敗だったかな?」なんて心残りを感じていた。
思いの外待たされて一台のパトカーが駐車場に入ってきた。
長尾は七隈交番の担当地域らしく、この時間帯はルートである福大通りはかなり混雑しているので止むを得ぬことだった。
道を隔てて東側の長丘は南区なので南警察署の管轄となり、長住交番の担当だ。長住交番までは車なら10分もかからない。道一つ隔てただけで警察の到着時間もかなり違うことになる。
「あれ?でも田島の交番のほうがココから近いのでは…?」
「田島交番は無くなりました」
「え!?なくなっちゃったんですか?」
「はい。8月に交番の再編成が行われて、田島は廃止になってうちの七隈交番の担当地域に取り込まれました」
「そうなんですか…」
二人やってきた警察官のうち年配のほうはかなり話し易い人だった。
…つづく…
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